2020年10月29日

「KOみなもと方広M」のものがたり4

欧字書体「K.E. Pisces-Black」のはなし

スラブ・セリフ体の先駆としてあげられる書体に「アンティーク(Antique)」があげられる。ジョゼフ・ジャックソン(1733–1792)の弟子ヴィンセント・フィギンス(1766–1844)によって1815年に制作された。わが国では「アンチック」とも呼ばれている。
キャズロン活字鋳造所で働いていたトーマス・コットレ(?–1785)の弟子ロバート・ソーン(1754–1820)の制作したスラブ・セリフ体は、ウィリアム・ソローグッドによって「エジプシャン(Egyptian)」と名づけられ、1820年に売りだされた。当時のイギリスのエジプト・ブームに便乗した命名だったそうである。
ロバート・ベズリによる「クラレンドン(Clarendon)」は1845年にイギリスのファン・ストリート活字鋳造所でうまれた。その名称はオックスフォード大学の印刷所だったクラレンドン・プレス(大学の総長をつとめたクラレンドン伯爵を冠する)に由来するといわれている。このことから、オックスフォード大学が出版する辞書のために作られたという説もある。
和字書体「みなもと」、漢字書体「方広」に組み合わせる欧字書体として、「アンティーク」「エジプシャン」「クラレンドン」の中から、わが国でもっとも知られている「クラレンドン」を選んだ。
『印刷活字総合見本帳』(ファン・ストリート活字鋳造所、1857年)所収の組み見本から抽出したキャラクターをベースに、日本語組み版に調和するように制作したのが「K.E. Pisces-Black」である。