浙江系統の宋朝体として、北宋刊本の『姓解』から復刻した「西湖」、南宋刊本の陳宅書籍鋪『南宋羣賢小集』から復刻した「陳起」、そして近代の金属活字による中華書局『唐確慎公集』から復刻した「七夕」のうち、どれかひとつを選び出すことにした。
『姓解』は初唐の楷書体、とくに欧陽詢の書風に影響を受けている。木版印刷ではあるが限りなく書字に近い。一方、金属活字版の中華書局『唐確慎公集』は近代明朝体の影響を受けているとも推察される。
書写から金属活字版に至る浙江地方の宋朝体の変遷の中で、分水嶺になったのは、間違いなく南宋の刊本、なかでも陳宅書籍鋪の書体であろう。書写から工芸の文字への大きな一歩だったと考えるからである。
「陳起」が一番なのだ。「陳起」を制作することに決めた。