2020年10月08日

「KOほくと武英M」のものがたり4

欧字書体「K.E.Cancer-Medium」のはなし

トランジショナルとは「過渡期の」という意味の形容詞である。オールド・ローマンからモダン・ローマンへの過渡期のローマン体ということだ。ネオクラシカルともいう。
候補としては、イギリスのジョン・バスカーヴィル(1706–1775)の活字と、フランスのピエール・シモン・フールニエ(1712–1768)の活字があげられる。
バスカーヴィルの活字は、オールド・ローマンの影響を残しながらも、コントラストを強めた水平垂直にちかい骨格になっている。フールニエ活字は、バスカーヴィル活字と同様に、画線の縦横比が大きく、均質で整理されているという特徴をもっている。
バスカーヴィルは1750年から印刷業に取り組み、活字書体設計の地道な研究と実験をくりかえした。活字だけではなくて、印刷インキや製紙など印刷技術の向上にも努めている。1757年に出版された古代ローマの詩人ウェルギリウスの『田園詩と農事詩』はバスカーヴィルの活字で組まれている。

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フールニエはパリで生まれ、1736年に金属活字の制作をはじめた。フールニエが考案した印刷活字のためのポイント・システムの原理は、現在にも息づいている。1764年に刊行した『タイポグラフィの手引き』第1巻には活字父型の彫刻と鋳造について詳細に解説され、1768年に刊行した第2巻にはフールニエが制作したほとんどの活字書体見本が掲載されている。

このふたつの活字書体のうち、バスカーヴィル活字を選択した。「K.E.Cancer Medium」は、バスカーヴィル活字が使用されている『田園詩と農事詩』から抽出したキャラクターをベースに、日本語組み版に調和するように制作している。