2020年10月21日

「KOくらもち銘石B」のものがたり3

漢字書体「銘石」のはなし(後)

ある学生さんから「銘石」の書体設計に関しての質問があった。

Q1 経験として、復刻の文字はどうやってもとのスタイルを守るでしょうか? 大切なポイントはなんでしょうか?
A1 原資料の書風を掴み取ることだと思います。細部の形状にとらわれると誇張して解釈することになるので、できるだけ全体を見ることにしています。

Q2 フォントの統一、スタイルの維持についてはどうやっていますか?
A2 復刻には二種類あります。現代の活字書体で全字種が揃っている場合には、すべての字種をスキャンして、そのままのイメージでアウトライン化をします。木版印刷のような場合には、まず資料の一ページをスキャンして、そこで書風を掴み取った上で、字種を拡張していきます。前者を復刻、後者を翻刻とすることもあります。「銘石」は後者で、いつでも元の資料を手元に置いて、確認しながら作業を進めるようにします。

Q3 文字の復刻するとき、最初は基本的なストロークとパーツ(へんとつくり)を設定してから、他の文字はパーツとパーツを組み合わせるというようなデザインしますか? あるいは一文字ずつ作っていますか?
A3 設計プロセスとして、書体見本字種(12字)は一字ごとに制作します。それをもとに基本字種(400字)に拡張します。この基本字種(400字)をベースにして、作字合成リストに基づいて偏や旁を組み合わせています。

Q4 古代の書籍の原資料(「王興之墓誌」)に基本のパーツがないとき、どうするでしょうか? そして、その骨組みはどうするでしょうか?
A4 最初の試作で書風を掴み取った上で、基本字種(400字)に拡張するときに類推して制作しています。結果として、現代の書体で馴染みのある骨組みになることが多いようです。

Q5 もし同じ文字で、原資料では二つ以上の違う様子があったら、どうするでしょうか?
A5 資料全体の書風を見て、よりイメージが合うものを選択しています。場合によっては、その中間をとることもあります。

Q6 復刻について最も難しいことはなんでしょうか?
A6 原資料の書風と、現代の書体に求められる条件で、どのように折り合いをつけるかということです。できるだけオリジナルの書風を生かしたいのですが、太さ、大きさなどを合わせなければなりません。字体の問題もあります。その辺りが悩ましいところです。

Q7 書体見本字種12字と基本字種400字というのは、どのように決めていますでしょうか?
Q7 他社の制作方法がどういうものかはわかりませんが、各社それぞれで異なるのだと思います。欣喜堂独自で決めたものです。

Q8 同じストロークでは、いくつか違うものを作りますでしょうか? 例えば「銘石」では、「一」はいくつかの違う横線があります。先に異なる「一」を複数作り、そのなかから選んで文字を組み合わせますか?
A8 パーツを単純に組み合わせるという考え方はしていません。制作する文字によって、それぞれの結構を考えたうえで調整しています。

Q9 パーツの組み合わせは経験による判断でしょうか? 元資料の火偏の左の点は、「銘石」の火偏と反対になっています。私は原資料と同じでも違和感がないと思います。このような折り合いをつけるところはなぜでしょうか?
A9 私は現代の日本では違和感があると判断しました。立刀も同様ですが、このような判断にあたっては第三者の意見による場合があったと思います。

Q10 折り合いをつけるところはどうするのでしょうか? ルールがありますか?
A10 書体ごとにだいたいのルールを決めています。それは制作中でも揺れることがあります。全面的に見直すこともしばしばです。

Q11 前に、原資料に出ていない文字の骨組みの設定についての質問を聞きました。「銘石」で、骨組みの設定に新しいデザインがあります。例えば、ストロークのサイズと太さは原資料に比べて違いますし、「射」「僕」の書き方とも変わっていますし、「侍」「尚」「書」の抱懐と重心はほとんど違いますし、このような骨組みの調整は、可読性と黒さのために考えていますでしょうか? あるいは他の原因がありますでしょうか?
A11 読む人が判別しやすいことを優先して考えています。全体的な統一、ほかの文字との兼ね合いということがあると思います。

Q12 重心の維持は、どのような科学的な方法がありますか?あるいは、自分の目で判断しますか? メインはどちらでしょうか?
A12 見た目です。

Q13 デザインの時、参考の線と枠がありますか? 例えば、懐と重心の設定のために。
A13 ガイドラインは、書体ごとに設定しています。特に横線が右上がりになる書体では、斜めのガイドラインを設定しています。懐や重心というのは、ガイドラインとしては考えていません。

Q14 書体ができる前に、大体どのくらいのポイントのサイズでテストしていますか? なぜでしょうか?
A14 ポイントサイズではテストしていません。基本的にはQ数を使っています。私は本文用が主なので、10Q〜16Qです。

Q15 経験としての判断で、開発できるフォントの条件や基準はなんでしょうか?
A15 私は、カテゴリーごとに「代表的だと思う書体」を復刻しています。それが後世に継承するべきものだと信じています。

Q16 品質が良いフォントはどのような条件を持っていますか? あるいは、どのような基準でフォントの良いかどうかを判断しますか?
A16 品質とは何かというのがよくわかりません。私は、過去から広く言われている理論に基づいて、それに近づけるように努力しているだけです。いつまでも手探りです。