2020年10月27日

「KOみなもと方広M」のものがたり2

漢字書体「方広」のはなし(前)

小学生向けの漢字辞典として『例解学習漢字辞典 第七版』(藤堂明保編、小学館、2010年11月24日)がある。小学生向けだが中学生でも十分に参照できる情報量を持っている辞典である。この見出し書体は一般の漢和辞典とはことなり、(教科書体を太くしたような)「特太の楷書体」である。
ふと思ったのが、国語辞典、漢字辞典、英和辞典の見出し書体と本文書体を、ひとつの日本語書体(和字書体・漢字書体・欧字書体)で作れないかということである。
漢字書体の候補として、中国・宋代の仏教経典『大方廣佛華巖経』(990–994年、龍興寺)を見つけ出した。それをもとに試作したのが「方広BK」である。
中国の印刷の初期において、仏教経典で用いられたのは荘厳で権威的なイメージのある肉太の字様だった。仏教経典の印刷は唐代から行われているが、時代と地域を越えて、経典の形態、字様、版式に大きな変化はみられないという。
『華厳経』は、すでに成立していた別々の独立経典を四世紀中ごろ以前に中央アジアのコータンあたりにおける大乗仏教の人々によって集成され編纂されたものだ。武則天(623–705)は、旧訳の華厳経に不備があるというので使者を派遣して梵本を求めさせ、あわせて訳経者も捜させた。実叉難陀(652–710)を洛陽に呼び大偏空寺で訳経させた。その漢訳経題を『大方廣佛華巖経』という。
このような仏教経典・儒教経典にもちいられている肉太の字様を「経典体」ということにしよう。「経典体」は「安竹体」のルーツではないが、ルーツだと思わせる形象だと思っている。