2020年12月09日

「日本語書体三傑」のこれから3

欧字書体について

欧字書体は、「欧字書体十二宮」の中から選んで組み合わせた。その際、ラインやウィドゥスなどは、それぞれの和字書体、漢字書体に合わせて再設定していくことにした。

K.E.Gemini
和字書体「おゝはなぶさ」、漢字書体「美華」と組み合わせる欧字書体として「K.E.Gemini」を選んだ。もとになったのは、ウィリアム・キャズロン(1692–1766)の活字である。
この活字書体は、未制作であるが「KOまどか毛晋M」「KOはなぶさ毛晋M」「KOはやと毛晋M」に「K.E.Gemini–Medium」が組み込まれている。「おゝはなぶさ美華」に組み合わせるために、ラインやウィドゥスなどを再設定し、ファミリー化を試みるつもりである。

K.E.Sagittarius
和字書体「おゝくれたけ」、漢字書体「伯林」と組み合わせる欧字書体として「K.E.Sagittarius」を選んだ。もとになったのは、ヘルマン・ベルトルト(1831-1904)のベルトルド活字鋳造所が1896年に発表したサン・セリフ体「アクチデンツ・グロテスク」である。
2012年3月に発売した「KOくらもち銘石B」「KOくれたけ銘石B」「KOくろふね銘石B」に「K.E.Sagittarius–Bold」が組み込まれている。「おゝくれたけ伯林」に組み合わせるために、ラインやウィドゥスなどを再設定しし、ファミリー化を試みるつもりである。

K.E. Pisces
和字書体「おゝことのは」、漢字書体「倫敦」と組み合わせる欧字書体として「K.E. Pisces」を選んだ。もとになったのは、ロバート・ベズリによる「クラレンドン」である。
発売予定の「KOみなもと方広BK」は、「KOたまゆら方広BK」、「KOことのは方広BK」に、「K.E. Pisces–Black」が組み込まれている。「おゝことのは倫敦」に組み合わせるために、ラインやウィドゥスなどを再設定し、ファミリー化を試みるつもりである。
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2020年12月08日

「日本語書体三傑」のこれから2

漢字書体「美華」「伯林」「倫敦」について


近代明朝体「美華」
『座右之友』(東京築地活版製造所、1895年)所載の「五號明朝」は、美華書館の明朝体を継承し、改良したものと考えられる。
『旧約全書』(上海・美華書館、1865年)は、足長で締まったイメージがするような気がする。『中国古音学』(張世禄著、上海・商務印書館、1930年)が腰を低くしてどっしりとした安定感があるのとは対照的である。「美華」は、『旧約全書』をベースにしている。

呉竹体「伯林」
呉竹体では、『座右之友』(東京築地活版製造所、1895年)所載の「五號ゴチック形文字」が挙げられる。荒削りながら腰高であるのは、『旧約全書』の近代明朝体と同じである。『瞿秋白文集』(瞿秋白著、北京・人民文学出版社、1953年)の見出しに用いられている呉竹体が、腰を低くしてどっしりとした安定感があるのとは対照的である。「伯林」は、『座右之友』所載の「五號ゴチック形文字」をベースにして試作した。

安竹体「倫敦」
『座右之友』には、「五號ゴチック形文字」とともに「五號アンチック形文字」が掲載されている。漢字書体の古いゴシック体、アンチック体がラインナップにほしいと思い、試作しておくことにした。とりわけ漢字書体のアンチック体を再生したいと思った。「倫敦」は、『座右之友』所載の「五號アンチック形文字」をベースにして試作した。

ゴシック体の漢字書体が普及していったのに対して、アンチック体の漢字書体はまったく見られない。アンチック体は和字書体のみの書体とみなされ、ゴシック体の漢字書体との混植によってのみ生き残ることとなり、あげくは太明朝体と組み合わされている和字書体と混同されることもある。
漢字書体の安竹体は、もともとは江戸時代の看板文字などを参考にしたようにも思われるが、より現代的に解釈することにした。
試作にあたっては、『BOOK OF SPECIMENS』(平野活版製造所、1877年)に掲載されている欧字書体としてのアンチック(Antique)とゴシック(Gothic)を意識した。ここにあるアンチック(Antique)とは、スラブセリフと呼ばれるカテゴリーに属する書体である。
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2020年12月07日

「日本語書体三傑」のこれから1

和字書体「おゝはなぶさ」「おゝくれたけ」「おゝことのは」について

和字書体「おゝはなぶさ」
「はなぶさ」は、和字書体三十六景第1集(2002年)のなかの1書体として発売された。「はなぶさ」の原姿は、『少年工芸文庫第8編 活版の部』(博文館、1902年)にみる和字書体であった。いわゆる「秀英舎四号活字」以前の書風で、その後の改刻によって埋もれていた書風をあらたな視点から発掘したものである。
「和字オールドスタイル」でも、字面を大きく設定することにより新しい可能性を見出すことができるのではないかと考えた。「おゝはなぶさ」ファミリーはそういう発想から誕生した。汎用性を高めるために字面を大きめに設定し、キャラクター個々の形象を検討して整合性を持たせるようにした。
制作にあたっては、ウェイトを「メディウム、シック、デミボールド、ボールド、エクストラボールド、ウルトラボールド、ブラック」の7ウェイトとしてファミリーを構築した。
同じ和字オールドスタイルの「まどか」も「おゝまどか」ファミリーとして制作できるのではないかと思っている。

和字書体「おゝくれたけ」
「くれたけ」は、和字書体三十六景第1集(2002年)のなかの1書体として発売された。「くれたけ」の原姿は、森川龍文堂『活版総覧』(1933年)に所載されている「12ポイント呉竹体」の和字書体であった。表情が豊かで、もっともスタンダードな形象をとどめていることから復刻することにした。
「和字ゴシック体」においても、字面を大きく設定することにより新しい可能性を見出すことができるのではないかと考えた。「おゝくれたけ」ファミリーもまた、そういう発想から誕生した。「おゝはなぶさ」ファミリーと同様に、汎用性を高めるために字面を大きめに設定し、キャラクター個々の形象を検討して整合性を持たせるようにした。
制作にあたっては、ウェイトを「ライト、メディウム、シック、デミボールド、ボールド、エクストラボールド、ウルトラボールド、ブラック、ヘヴィ」の9ウェイトとしてファミリーを構築した。
和字ゴシック体の「はるか」も「おゝはるか」ファミリーとして制作できるのではないかと思っている。

和字書体「おゝことのは」
「ことのは」は、和字書体三十六景第2集(2003年)のなかの1書体として発売された。「ことのは」の原姿は、『辞苑』(新村出編著、1935年初版、博文館)の見出し語の書体である。辞書だったので、50音それぞれのキャラクターを抽出できた。
「和字アンチック体」においても字面を大きく設定することにより新しい可能性を見出すことができるのではないかと考えた。「おゝことのは」ファミリーも、形象をさらに検討するとともに、より一層汎用性を高めるために字面を大きめに設定した。
ウェイトを、「ライト・メディウム・シック・デミボールド・ボールド・エクストラボールド・ウルトラボールド・ブラック・ヘヴィ」の9ウェイトとしてファミリーを構築した。
和字アンチック体の「たまゆら」も「おゝたまゆら」ファミリーとして展開できるのではないかと思う。
posted by 今田欣一 at 09:03| Comment(0) | 活字書体の履歴書・第6章 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする