2020年08月02日

ほしくずや「くみうた」と「にぎわい」のものがたり2

「くみうた」クラン

「ゆきぐみ」は明治時代の木版教科書、『中等國文 二の巻上』(1896年、東京・吉川半七藏版)を参考にして制作した書体である。「ゆきぐみ」のほかにも「つきぐみ」「はなぐみ」を制作することにした。これらを「くみうた」クランと呼ぶことにする。
『中等國文 二の巻上』にはじめて出会ったのは、サンシャインシティ大古本まつりだった。そのとき明治時代の教科書は、使い古した段ボール箱に無造作に入れられ、1冊200円で売られていた。何かの資料になればというぐらいの気持ちで、数冊買った記憶がある。そのうちの1冊にちがいない。
しばらくはそのまま置いていた。ある日のこと、なにげなく手に取ってぱらぱらと眺めていて、面白いことに気がついた。本文は楷書体だが、手紙文は行書体なのだ。欧字書体のローマン体とセットになったイタリック体を思い出した。楷書体と行書体をセットにした書体を作れないものかと考えはじめた。
当初は、和字書体・漢字書体・欧字書体をセットにした日本語書体として企画していたのだが、とくに漢字書体まで制作しようとすると膨大な時間と費用がかかる。漢字書体と欧字書体は、すでに優れた書体が多く販売されていることから、まずは和字書体を優先して制作することにした。
よく見ると、彫刻の味わいが残るいい書体だ。毛筆で書かれた文字が、彫刻刀でなぞられることによって力強さが加味されたようだ。まさに、じんわりと好きになってきた。楷書体と行書体、それぞれに組み合わされることを想定した和字書体を制作することにした。
楷書体、行書体に、隷書体も加えようと思ったが、教科書に隷書体を使ったものはみつからなかった。ならば地図はどうだ。少し無理はあったが、昭和初期の地図『東京』(1934年、大日本帝国陸地測量部)の等線の手書き文字を参考にして、隷書体と組み合わせることを想定した和字書体を加えた。
漢字書体の楷書体・行書体・隷書体をむすぶ書体の一族が誕生したのである。楷書体と組み合わせる和字書体を「ゆきぐみ」、隷書体と組み合わせる和字書体を「つきぐみ」、行書体と組み合わせる和字書体を「はなぐみ」とした。
当初は、和字書体・漢字書体・欧字書体をセットにした日本語書体として企画していたのだが、とくに漢字書体まで制作しようとすると膨大な時間と費用がかかる。漢字書体と欧字書体は、すでに優れた書体が多く販売されていることから、まずは和字書体を優先して制作することにした。

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「ゆきぐみ」(2009年、2012年)
「つきぐみ」(2009年、2012年)
「はなぐみ」(2009年)


「くみうた」クランでは全体的な構想を優先したいが、資金も時間も労働力もない。そこで他社の書体との混植を想定して制作することにした。どこか特定のメーカーということではない。主要なメーカーを、「くみうた」クランでつないでいくというのもいいのではないかと思った。
明朝体、ゴシック体のファミリーまでなら多くのメーカーで制作されているが、楷書体、行書体、隷書体を揃えているメーカーは少ない。しかも明朝体、ゴシック体ほどには、楷書体、行書体、隷書体に力を入れていないように思える。使用状況を考えるとやむを得ないことだろう。
これにくわえて、もうひとつの大きな構想がふくらんできた。それは「ゆきぐみ」を明朝体に、「つきぐみ」をゴシック体に組み合わせる和字書体を同じコンセプトで制作するということだった。大きさを工夫して、それぞれを「ゆきぐみラージ」、「つきぐみラージ」とした。
漢字書体の楷書体・行書体・隷書体にくわえて、明朝体・ゴシック体をふくみ、それぞれがファミリーを形成するという今までにない壮大な構想ができあがった。
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