2020年09月05日

「KOばてれん志安M」のものがたり4

欧字書体「K.E.Libra」のはなし

日本語フォントのなかにも欧字書体がある。これも制作しないわけにはいかない。漢字書体、和字書体が過去の優れた活字書体(もしくは書字・刻字)を再生してきただけに、欧字書体も同じ考え方をしようと思った。
漢字書体「志安」に対応する欧字書体はK.E.Libra である。漢字書体が元朝体ということで、欧字書体はイタリック体と合わせることにしたのだ。
制作の参考にしたのは、アントニオ・ブラドーがルドヴィコ・デリ・アリッギの制作した活字を用いて印刷した『Vitasfortiae』 (1539年) の1ページである。
ここにあるだけのキャラクターを抜き出してみることから始めた。ちいさなタイプサイズから拡大したので、エッジがシャープでない。これだと解釈の幅が大きくなってしまい、過去の復刻書体とまったく違ってしまうことも考えられた。
そこで、Monotype Blado、Centaur Italic、Adobe Poetica など既存の復刻書体を参考にすることにした。なかでもCentaur Italic をおおいに参考にしたのだが、慣れていないこともあって、最初の試作の段階では強く影響を受けすぎてしまった感があった。試作していたものとは大幅に変えようと思い、全面見直しを始めた。
とくに意識したのは、日本語フォントのなかの欧字書体だということである。まず傾斜角度。もともとの参考図版では大文字は正体だったが、小文字に合わせて斜体にした。傾斜角度も参考図版にあわせた角度とした。
小文字は、参考図版よりも少し広めに設計した。これは和字、漢字と混植することを前提にして、参考図版に合わせると少し黒めに見えるからである。同様に、サイドベアリングもやや広めにして、明るく見えるようにした。
日本語フォントのなかの欧字書体では英語だけではなく、フランス語、ドイツ語、スペイン語などのヨーロッパ各国語が組める。代表的な言語でテストしてみた。それぞれの言語は翻訳ソフトによるものなので、正確ではないかもしれない。イメージとしてみるだけである。ここから調整を繰り返しながら完成へともっていくことになる。
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