2020年10月22日

「KOくらもち銘石B」のものがたり4

欧字書体「K.E.Sagittarius-Bold」のはなし

1816年にウィリアムス・キャズロン4世によって金属活字のサン・セリフ体が発表された。サン・セリフ体はスラブ・セリフ体からの変形とも見られるが、19世紀のドイツでは「ステイン・クリフト(石の文字)」と呼んでいたことから、サン・セリフ体の起源を古代ギリシャの石碑文とする意見もある。
ちなみにヴィンセント・フィギンス(1766–1844)が1832年に「サン・セリフ(Sans-Serif)」と名をつけてから、サン・セリフ体として定着したようである。
サン・セリフ体が本格的に印刷用活字書体として使用されるのは1830年代だ。キャズロン活字鋳造所では古代ギリシャを意味する「ドーリック(Doric) 」と呼んでいた。ウィリアム・ソローグッド(?–1877)は「グロテスク」と名づけている。1898年にドイツ・ベルリンのベルトルド活字鋳造所が製作した活字書体が「アクチデンツ・グロテスク(Akzidenz Grotesk)」である。アクチデンツ・グロテスクは1906年までに4種類のウエイトが展開されている。
アメリカでは1837年にボストン活字鋳造所が「ゴシック」という名前をつけて、イギリスとの差異化をはかった。しかしながら「ゴシック」とは本来はブラック・レター体を意味するので、まぎらわしい呼び方になった。アメリカ活字鋳造会社のモリス・フラー・ベントン(1872–1948)は1905年に「フランクリン・ゴシック (Franklin Gothic) 」を発表している。
K.E.Sagittarius-Boldは、『ノイエ・グラフィーク』(1858年)に掲載された「アクチデンツ・グロテスク」の使用例から抽出したキャラクターなどをベースに、日本語組み版に調和するように制作した欧字書体である。
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