2020年11月02日

「KOさがの臨泉M」のゆめがたり1

和字書体「さがの」のはなし

和字書体「さがの」は、和泉書院影印叢刊27『伊勢物語 慶長十三年刊嵯峨本第一種』(片桐洋一編、和泉書院、1981年)を参考にして制作した。

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角倉素庵が、本阿弥光悦らと寛永以前の慶長・元和(1596–1624)にかけて刊行した嵯峨本は、おもに木活字をもちいて用紙・装丁に豪華な意匠を施した美本であった。
角倉素庵(与一、1571–1632)は、事業家・角倉了以の長男である。父の事業を継いで海外貿易・土木事業を推進した素庵は、また文化人としても卓越した業績を残している。晩年になって嵯峨に隠棲した素庵は数多くの書物を刊行したが、これを出版地の名称にちなんで嵯峨本といい、『伊勢物語』など一三点が現存している。
嵯峨本は雲母模様を摺った料紙を使用するなどした、豪華な装幀が特徴である。また従来の漢文の書籍に対して、古典文学の出版の道を開き、また冊子に純粋な日本画を挿入する様式を決定するなどの、江戸時代の出版文化の隆盛に画期的な役割をはたしたという。

嵯峨本にも『方丈記』がある。『伊勢物語』と同じくひらがな本だ。影印本としては『方丈記』(山岸徳平編、新典社、1970年)がある。一方、大福光寺所蔵本『方丈記』(1244年)はカタカナ本である。『伊勢物語』と同じくひらがな本だ。カタカナは影印本の『方丈記』(武蔵野書院、1959年)を参考にして制作した。
posted by 今田欣一 at 08:59| Comment(0) | 活字書体の履歴書・第6章 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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