銅版印刷とは、銅製の一枚板を使った凹版印刷の一種である。活字版が陽刻・凸状の版になるのにたいし、凹版は陰刻・凹状の版になる。その素材として銅が多く使われたために、凹版印刷のことを一般的には銅版印刷と呼んでいる。
金属板にじかに彫刻する方法(エングレーヴィング)での銅版印刷は1420年から1430年ごろにかけてドイツとイタリアではじめておこなわれた。17世紀以降には腐食銅製技法(エッチング)が主流になったが、フランス宮廷ではエングレーヴィングを銅版印刷の唯一の製作技法と認めていた。
チャンセリー・バスタルダを源流にして、エングレーヴィング技法のなかで育まれてきた銅版文字を、鋭くカットされたペンによって模倣したのがラウンド・ハンドである。
マシュー・カーターは、1966年にチャールズ・スネルのラウンド・ハンドを復刻した「スネル・ラウンドハンド(Snell Roundhand)」を、1972年にはジョージ・シェリー(1666–1736)のラウンド・ハンドを復刻した「シェリー(Shelly)」を発表している。
ラウンド・ハンドは、そののち個性的で装飾的な面をそぎ落とされた「スクリプト体」と発展していった。
欧字書体「K.E.Scorpio-Medium」は、『活字書体見本帳』(フライ・アンド・スティール活字鋳造所、1795年)のスクリプト体を参考にしながら、日本語組版に調和するように制作した書体である。