2020年11月16日

「KOめじろ上巳M」のゆめがたり1

和字書体「めじろ」のはなし

昭和時代後期から平成にかけての和字書体を、「和字モダンスタイル」とする。欣喜堂制作の書体では「ひばり」「めじろ」があるが、新聞書体から復刻した「うぐいす」が一番イメージに近いかもしれない。

わが家にテレビがやってきたのは東京オリンピックを見るためだった。田舎でもだんだんと買い求める家庭も多くなってきていて、さすがに我が家でも東京オリンピックは見たかったのだろう。町の電器屋さんにすすめられて、富士電機製のテレビを買ったのだった。
1964年10月10日、東京オリンピック開会式。テレビの音声を、オープンリールのテープレコーダーで録音した。直接接続はできずテレビの前に置いて録音したので、話し声も録音されてしまった。小学校4年生で、声変わり前の僕の声も入っていた。
そのテープを何度も繰り返し聞いた。アナウンサーの実況をそらんじた。音だけで情景が浮かんでくるのだ。そのテープも今はもうなくなってしまった。それでも古関裕而作曲のオリンピック・マーチは、今でも覚えている。
ある日のこと、なにげなく父の蔵書を眺めていて、薄っぺらな一冊の書物を見つけた。ちょうど東京オリンピックが終わった頃に出た本だ。その本は『センサスの経済学』(児島俊弘・関英二著、財団法人農林統計協会、1964年11月25日)という。「1965年中間農業センサス副読本」とある。

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そのころ父は町役場の地方公務員で、農業指導員のようなことをしていた。くわしいことはよく知らないが、おそらく農業に関する統計調査も担当していたのではないか。そのためにこの本も読んでいたのだろう。
読むというわけではなく、思い出にふけるというのでもなく、ただパラパラとページをめくってみた。そこに現れた本文の書体は、まさに昭和30年代、高度成長期をイメージさせるふくよかな和字書体ではないか。
これがどういう書体かは調べないとわからないが、直感で「これは復刻しなければ!」という衝動に駆られた。
東京オリンピックに象徴される高度成長期に出版された書物の、豊満なスタイルの和字書体に出会ったことにより、「和字モダンスタイル」というカテゴリーに中心軸ができたように感じた。同カテゴリーは「うぐいす」「ひばり」という鳥の名前から命名しているので、「めじろ」ということにした。
posted by 今田欣一 at 08:19| Comment(0) | 6章:日本語書体12撰・第3期 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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