2020年12月08日

「日本語書体三傑」のこれから2

漢字書体「美華」「伯林」「倫敦」について


近代明朝体「美華」
『座右之友』(東京築地活版製造所、1895年)所載の「五號明朝」は、美華書館の明朝体を継承し、改良したものと考えられる。
『旧約全書』(上海・美華書館、1865年)は、足長で締まったイメージがするような気がする。『中国古音学』(張世禄著、上海・商務印書館、1930年)が腰を低くしてどっしりとした安定感があるのとは対照的である。「美華」は、『旧約全書』をベースにしている。

呉竹体「伯林」
呉竹体では、『座右之友』(東京築地活版製造所、1895年)所載の「五號ゴチック形文字」が挙げられる。荒削りながら腰高であるのは、『旧約全書』の近代明朝体と同じである。『瞿秋白文集』(瞿秋白著、北京・人民文学出版社、1953年)の見出しに用いられている呉竹体が、腰を低くしてどっしりとした安定感があるのとは対照的である。「伯林」は、『座右之友』所載の「五號ゴチック形文字」をベースにして試作した。

安竹体「倫敦」
『座右之友』には、「五號ゴチック形文字」とともに「五號アンチック形文字」が掲載されている。漢字書体の古いゴシック体、アンチック体がラインナップにほしいと思い、試作しておくことにした。とりわけ漢字書体のアンチック体を再生したいと思った。「倫敦」は、『座右之友』所載の「五號アンチック形文字」をベースにして試作した。

ゴシック体の漢字書体が普及していったのに対して、アンチック体の漢字書体はまったく見られない。アンチック体は和字書体のみの書体とみなされ、ゴシック体の漢字書体との混植によってのみ生き残ることとなり、あげくは太明朝体と組み合わされている和字書体と混同されることもある。
漢字書体の安竹体は、もともとは江戸時代の看板文字などを参考にしたようにも思われるが、より現代的に解釈することにした。
試作にあたっては、『BOOK OF SPECIMENS』(平野活版製造所、1877年)に掲載されている欧字書体としてのアンチック(Antique)とゴシック(Gothic)を意識した。ここにあるアンチック(Antique)とは、スラブセリフと呼ばれるカテゴリーに属する書体である。
posted by 今田欣一 at 08:44| Comment(0) | 活字書体の履歴書・第6章 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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