2020年12月17日

「星屑書体集成」のこれから4

漢字書体「白澤」と欧字書体「Vrijheid」と

漢字書体「白澤明朝」「白澤呉竹」「白澤安竹」のこと
デジタルタイプのグランドファミリーとして、近代明朝体の「白澤明朝」、ゴシック体の「白澤呉竹」、アンチック体の「白澤安竹」を試作している。白澤とは古代中国において、鳳凰、麒麟と同じように、有徳の王の時代に現れるという想像上の神獣である。

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『デザインのひきだし26』(グラフィック社、2015年10月25日発行)というムックの中の「もじ部 フォントの目利きになる!15 typeKIDS(今田欣一さんと仲間たち)編」という記事が掲載された。取材は2015年7月5日に新宿区榎町地域センター大会議室で行われた。書記は雪朱里さん。その記事の中で、「白澤中明朝」「白澤太ゴシック」「白澤太アンチック」も取り上げられた。
勉強会の写植文字盤プロジェクトで、体験学習のために「白澤中明朝」「白澤太ゴシック」「白澤太アンチック」の書体見本を作成した。書体見本12字を48mm角の専用下書き用紙に鉛筆で描き、フィルムに墨入れをして原字とした。これを縮小して簡易文字盤(四葉)に貼り込み、手動写真植字機PAVO-KYでテスト印字まですることができた。
この時、近代明朝体、ゴシック体とともに、漢字書体としてはあまり馴染みのないアンチック体を試作している。
①東京築地活版製造所の見本帳で、「五號明朝」、「五號ゴチック形文字」とともに、「五號アンチック形文字」が掲載されていること。
②写研の手動写植機文字盤に「石井横太明朝」があり、この書体について、佐藤敬之輔氏が『ひらがな 上』(丸善、1964年)のなかで「要するに漢字を加えたアンチック体である」と書いていること。
③写研のレーザー式電算写真植字機用デジタルタイプとして、本蘭ゴシック・ファミリーとともに本蘭アンチック(発表時は本蘭A明朝)・ファミリーが企画されていたこと。

以上のような経緯を踏まえて、近代明朝体、ゴシック体と並ぶ主要書体として、漢字書体のアンチック体を確立しておこうと思い、あえて試作しておくことにしたのである。
勉強会では、写植文字盤を製作して、テスト印字まで行ったところで終了したのだが、さらにデジタルタイプとして継続していこうと考えた。デジタルタイプ化にあたり、書体名を「白澤明朝」「白澤呉竹」「白澤安竹」に変更した。漢字書体は漢字表記にしたかったからである。
もうひとつ、『タイプフェイスデザイン漫遊』(今田欣一著、株式会社ブッキング、2000年)で試作していた「欣喜明朝W3」「欣喜ゴシックW3」という書体があった。ここで「欣喜アンチックW3」は、漢字書体を試作していなかった。
この二つを原点にしながら、デジタルタイプとして新しいイメージで作ってみようと考えた。混植する和字書体は「きたりすロマンチック」「きたりすゴシック」「きたりすアンチック」を想定している。また欧字書体は試作している「Vrijheid Serif」「Vrijheid Sans」「Vrijheid Slab」と組み合わせる。
まずは「白澤安竹」から始めて、「白澤明朝」「白澤呉竹」へと展開していくことにした。
ファミリー化することを念頭において、「白澤安竹」のライト・ウエイトとブラック・ウエイトの2ウエイトで書体見本字種12字を、専用の下書き用紙に鉛筆で描いてみた。ファミリーとしての一貫性をあらかじめ確かめておこうというのが狙いである。下書き用紙は、A4サイズの用紙に48mm角で12文字が入るように作っている。漢字書体としては、48mm角で下書きをするのがやりやすいと感じる。慣れというのもあるが、これ以下だと、特に筆法や結法が描ききれないのである。

欧字書体「Vrijheid Serif」「Vrijheid Sans」「Vrijheid Slab」のこと
和字書体「きたりす」、漢字書体「白澤」と混植する欧字書体として、「フレイヘイド(Vrijheid)」を制作する計画である。
具体的には、フレイヘイド・セリフ(Vrijheid Serif)、フレイヘイド・サン(Vrijheid Sans)、フレイヘイド・スラブ(Vrijheid Slab)として、統一してデザインすることである。
できれば従属欧文ということばは使いたくない。日本語フォントは、和字書体・漢字書体・欧字書体が対等な関係だと考えて設計しているからだ。だから、たとえ日本語フォントの中の欧字書体であっても、「フレイヘイド(Vrijheid)」のように固有の書体名をつけることにしている。
新刻といっても資料をまったく見ないということではない。出島版『トラクタート(TRAKTAAT)』(ドンケル・キュルティウス編、1857年)に用いられた活字書体を参考にして、下書きから書き起こす方法で制作している。
「Vrijheid(フレイヘイド)」は、箕作阮甫を主人公にした小説『フレイヘイドの風が吹く』(市原真理子著、右文書院、2010年)から取った。
フレイヘイドとは自由を意味するオランダ語で、幕末当時の言い方である。オランダ語の発音とは異なるそうだが、書体名としては日本での慣例に従い「フレイヘイド」としておく。
鶴ヶ島市立図書館に出かけて、『講談社オランダ語辞典』(講談社)で「Vrijheid」を調べてみた。
vrijheid [女]
1 自由; 解放,免除
2 特権
3 勝手,気まま,無遠慮


※2020年12月24日更新
※2021年1月2日更新
posted by 今田欣一 at 08:26| Comment(0) | 6章:日本語書体12撰・第3期 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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