百合が原公園
訪れたのは札幌・百合が原公園である。
札幌で百合が原公園を思い浮かべる人は多くないと思う。旅行ガイドにも大きく取り上げられてはいない。今から30年以上前の1986年に開催された「さっぽろ花と緑の博覧会」の会場になったところなのである。
百合が原公園全体は広大である。園内を周回するリリートレインが、1時間に2、3本の間隔で運行されているぐらいだ。この公園のシンボルであるユリを始め、ライラックやチューリップなど多くの植物が、それぞれの花壇に植栽されており、1年中、花に囲まれる公園である。
「さっぽろ花と緑の博覧会」の時に作られたのが「世界の庭園」エリアである。札幌市の日本庭園と、札幌市の姉妹都市、中国・瀋陽市、ドイツ・ミュンヘン市、アメリカ・ポートランド市の庭園を巡る構成になっている。
日本庭園(日本・札幌市)は、池泉回遊式の庭園である。池にはり出した平安風の水舞台を中心に、城壁風石垣と、竹垣、鹿威し(ししおどし)、蹲(つくばい)など日本庭園の技がコンパクトに盛り込まれている。北方系樹種が多く植栽されているのが特徴である。1983年の国際庭園博覧会で、ドイツ造園連盟大金賞を受賞したものと同じ設計である。
中国庭園(中国・瀋陽市)の「瀋芳園」は、中国の伝統的な自然山水の庭園である。庭園内の建造物は、明・清代の建築様式。木組と屋根の瑠璃瓦は中国で製作され、特に瑠璃瓦は王宮の建物以外には使うことのできない貴重なものだ。瀋陽市公園管理処の指導により施工された。「瀋芳園」の名には、「万古流芳(永遠に名を残す)」の意が込められている。
西洋庭園(ドイツ・ミュンヘン市)の「ムンヒェナーガルテン」はバイエルン地方の伝統的庭園に近代性を組み合わせた沈床式庭園(サンクンガーデン)である。全体的にはシンメトリーで幾何的な庭園で、樹木に囲まれた中に小川の流れるメドウガーデンがある。ミュンヘンの造園家、ゲアハルト・トイチェ氏とザンボ・ヴィットマン氏によって設計された。
もうひとつ、ポートランド市の一般的な家庭の庭を再現したという「ポートランドガーデン(アメリカ)」がある。ポートランドの造園家、バーバラ・フェリー氏によって設計されたものだ。
思ったよりこぢんまりとしていたが、日本・中国・西洋の庭園をひとつのエリアに集め、それぞれが特徴を出しながら一体となっている。30年以上に渡り、維持し、公開され続けているのは素晴らしいことだ。
夕刻、イメージナビ株式会社を再訪。改めてフォントのダウンロード販売についてのプロモーションを強化することとともに、現状の市場環境から今後の戦略を検討していくことになった。
[札幌ほしくずナイト]
百合が原公園の「世界の庭園」エリアでは、それぞれが独立して並んでいるが、組み合わせられることはない。ところが日本語の活字体は、和字書体、漢字書体、欧字書体を組み合わせることによって成り立っている。
「日本語書体八策」の構想では、明治時代の和字書体と明代の漢字書体を組み合わせた「きざはし金陵M」と、そのファミリーとして「きざはし金陵B」を制作した。さらに「日本語書体四坐」の構想で、同じく明治時代の和字書体と明代の漢字書体を組み合わせた「まどか毛晋M」がある。
大正時代の和字書体(木版印刷)と清代の漢字書体(清朝体)を組み合わせた「さくらぎ蛍雪M」、さらに昭和時代の和字書体(活字版印刷)と清代の漢字書体(過渡期明朝体)を組み合わせた「ほくと武英M」を制作した。
「日本語書体四坐」のうち近現代の活字体としては、「めじろ上巳M」および「めぐろ端午B」を制作している。さらに「たおやめ上巳M」「ひばり上巳M」さらには「ますらお端午B」「ふじやま端午B」という組み合わせを考えている。
中島公園
翌5月31日、25年ぶりに中島公園を訪れた。まずは日本庭園を散策してから「豊平館」へ。
「豊平館」は1880年(明治13年)に開拓使が迎賓館、ホテルとして建てた歴史的建築物である。
「北海道立文学館」では、アイヌ民族の文学、有島武郎をはじめ北海道を舞台にした文学を紹介する常設展「北海道の文学」のほか、特別展「よみがえれ!とこしえの加清純子—『阿寒に果つ』ヒロインの未完の青春—」が開催されていた。
北海道大学植物園
北海道大学植物園にも立ち寄った。リーフレットは日本語版、英語版、中国語版(簡体字)、他に韓国語版が用意されていた。
モデルコース(45分)の内回りルートに従い、北方民族資料館、博物館・重要文化財群を中心に急ぎ足で巡った。