『科学万博-つくば’85 公式ガイドブック』とともに
2022年10月7日午後、東武東上線、JR武蔵野線、つくばエクスプレスを乗り継いで、TXつくば駅に向かう。関東地方は朝から雨。TXつくば駅に着いた頃には、本降りになっていた。
つくばエキスポセンター
天気予報が雨だったので、予定を大幅に変更して、この日は「つくばエキスポセンター」のみの見学とした。駅から雨の中を歩く。思っていたのより遠く感じたのは雨のせいだろう。
到着後、まず外観の撮影を試みる。翌日には雨は上がるという予報だったので折り畳み傘にしたのだが、風に煽られてしまってかなり大変だった。それでもなんとか頑張った。こういう写真も臨場感があっていいだろうと自分を納得させる。
ちょうどプラネタリウムの特別番組があるというので、プラネタリウム券(入館料含む)を購入する。プラネタリウムの上映まで少し時間があったので、屋外展示場を回ることにする。
屋外展示場は、EXPO’85のときには「こどもパーク」だった。『科学万博-つくば’85 公式ガイドブック』には次のように書かれている。
●こどもパーク
テーマは〝人間と環境の再発見〟。屋内と屋外のこどもパークには、〝科学する心〟と〝技術への興味〟を育む子供のための科学展示物がいっぱい。楽しい科学公園だ。
現在では、H-Ⅱロケットや南極用雪上車などが展示されている。なにしろ雨の中なので、近くのH-Ⅱロケットだけでも写真を撮っておくことにした。傘をさして歩いている人がちらほらといる。足元も悪いので、広場に行くことはためらった。
そうこうしているうちに、プラネタリウムの上映時間が近づいてきた。EXPO’85のときには「コズミックホール」と言われていた。
●コズミックホール
青い地球を離れ、火星を通過。巨大な木星に近づく。宇宙飛行士だけが知っている神秘的な宇宙のパノラマを、音響とともに楽しめる世界最大のプラネタリウム(ドーム直径25.6m)。また、高品位テレビ大画面(タテ4.8m×ヨコ25.6m)を利用して行われる多彩なイベント。21世紀を意識した多目的映像フォーラムである。
プラネタリウムでは、こども番組、星空解説番組、オリジナル番組、特別番組が上映されていた。秋季の特別番組は「Aurora Night」である。座席をリクライニングにして、ゆったりとした時間を過ごす。その後スタッフによる秋の星空の生解説もあった。
プラネタリウムへのプロムナードが「科学万博-つくば’85メモリアル」というコーナーになっていた。各パビリオンの紹介や、コスモ星丸やワスボット、コンパニオンのコスチューム、パビリオングッズなどがコンパクトにまとめられている。
最後に、1F展示場、2F展示場をまわる。EXPO’85のときには「サイエンスフォーラム」と言われていた。
●サイエンスフォーラム
わが国の研究機関の現状や研究学園都市で行われている研究を、子供から専門家まで幅広い層に紹介するシステムを完備。諸外国からのお客さまにも日本初の多言語サービスシステム“MOST“でわかりやすく紹介される。
1F展示場は、高性能電気自動車と「おもしろサイエンスゾーン」、カプセルシアターと「エネルギーゾーン」、他に「科学者のしごと」「見えない光でものを見る」というコーナーがある。
2F展示場には「生命への挑戦」「超への挑戦」「ナノへの挑戦」「環境への挑戦」「宇宙への挑戦」などのコーナーに分けられている。
もちろん当時とは展示内容は違っているだろうが、最新の科学技術を体験型展示で楽しめるように工夫されているようだ。
雨は降り続いていた。夕食をとって、早めにホテルに向かうことにする。ホテルで、短編(約60分)の『EXPO’85 科学の祭典』という記録映画を観て気分を高めることにしよう。
科学万博記念公園
翌朝7時過ぎ、つくばエクスプレスの万博記念公園駅に降り立つ。雨は上がっていた。駅前広場には、岡本太郎作のモニュメント「未来を見る」が移設展示されている。思ったより大きい。
万博記念公園駅というが、科学万博記念公園までは1.6km離れている。YouTube Musicで西城秀樹の歌う「一万光年の愛」を聴きながら、田舎道を歩くこと約20分、やっと科学万博記念公園に到着。
南口から入園、管理事務所のある西口方面をめざす。左側の「ソニー・ジャンボトロン」があった場所は、5面のテニスコートになっている。西口から北口へと続く銀杏の並木道は紅葉スポットとして知られている。
万博記念公園のモニュメント「科学の門」は、テーマ館(日本政府出展)の「シンボルタワー」だった。『科学万博-つくば’85 公式ガイドブック』のテーマ館の項には次のように書かれている。
高さ40mの透明なシンボルタワー。その左右に広がる大きな2棟の総ガラス張りの建物が、日本政府出展のテーマ館。映像やロボット、実物、ジオラマなど多彩な展示によって、科学万博のテーマ「人間・居住・環境と科学技術」に真っ正面から取り組んでいる。外光をいっぱいに取り入れた構造がひときわ光って見える。
これを4分の1のサイズで再現しているので、やはり小さいという印象である。さすがに原寸での保存は難しかったのだろうか。
開会式が行われた「エキスポプラザ(日本政府出展)」の跡地は、「シンボル広場」という円形の芝生広場になっている。
自由にくつろげるエキスポ会場のオアシスだった「エキスポパーク」は、ほぼそのままで整備されているようだ。
未来志向のパピリオン建築群が立ち並ぶ万博会場の中で、Dブロックは、筑波本来の自然環境をそのまま残した公園緑地帯である。エキスポプラザからジャンボトロンのまわりまで広がる緑の芝生におおわれた「ぽっかりが丘」。その丘からなだらかに落ち込む谷に設けられた人工湖「ぽっちゃん湖」。エキスポプラザ脇の木立の間から湧き出した泉は、せせらぎとなってぽっちゃん湖へと注ぐ。遊歩道に沿って植え込まれたイチョウやケヤキが涼しげな木陰をつくり出す。食事や休憩など、自由にくつろげるエキスポパーク。緑と水辺のレスト・スペースである。
ぽっかりが丘は「芝生広場」として、ぽっちゃん湖の周辺一帯は「水辺広場」として整備されている。
つくばサイエンスツアー
つくばセンター・バスターミナルから、筑波学園都市の研究機関をめぐる「つくばサイエンスツアーバス」が運行されている。1日乗り降り自由の1日乗車券を購入し、9時15分、現代版パビリオンめぐりに出発。
午前中は北回りルート。まず向かったのは、国土地理院の「地図と測量の科学館」(入館無料)だ。常設展示室では「測量の通史」と「地図の通史」がパネル展示されている。「古地図コーナー」が興味深い。また、図化機や航空カメラなどの展示もあった。屋外の地球ひろばには「日本列島球体模型」や測量用航空機「くにかぜ」が展示されている。
つぎに向かったのが国立科学博物館の「筑波実験植物園」(65歳以上入園無料)だ。思っていたより広い。中央広場を中心に「生命を支える多様性区」と「世界の生態区」に分けられている。後者のうち、「サバンナ温室」、「熱帯雨林温室」、「水生植物温室」、「熱帯資源植物温室」および「多目的温室」にしぼって見学した。
つくばセンター・バスターミナルに戻り、昼食タイム。駅前のショッピングセンター、BiViつくば内の「つくば蕎麦物語」というお店で、おすすめの「筑波おろし」をいただいた。
午後からは南回りルート。まずは、産業技術総合研究所・地質調査総合センターの「地質標本館」(入館無料)を見学する。「地球の歴史」、「生活と鉱物資源」、「生活と地質現象」、「岩石・鉱物・化石」という四つの展示室をめぐる。標本の量に圧倒される。
同じ産業技術総合研究所・つくばセンターの「サイエンススクエアつくば」(入館無料)を急ぎ足で見学。イノベーション・ゾーンの「ライフ・テクノロジー」「グリーン・テクノロジー」「マニュファクチャリング」「マニュファクチュアリング」の3コーナーを見たあと、ワンダー・オブ・サイエンスのコーナーへ。「産総研のロボットたち」が目を引く。
最後はJAXAの「筑波宇宙センター」(入館無料)だ。H-Ⅱロケットが出迎えてくれる。JAXAのビルをバックに写真を撮影する。
展示館「スペースドーム」では「ドリームポート」と、大型マルチビジョン「マモルホシ」から。「人工衛星による宇宙利用(情報通信・測位)」、「未来をひらく人工衛星」、「人工衛星による宇宙利用(挑戦の歴史)」、「人工衛星による宇宙利用(地球観測)」を見学する。
そして「有人・宇宙環境利用」のコーナーでは、国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟の内部に入れる。
また、国際宇宙ステーション補給機「こうのとり」試験モデルが展示されている。「ロケット・輸送システム」では歴代ロケットの模型が並ぶ。「宇宙科学研究・月惑星探査」のコーナーでは月周回衛星「かぐや」の試験モデルと、小惑星探査機「はやぶさ2」の実物大模型が目を引く。
最後に、「人工衛星の追跡管制/スペースデブリ観測」と「基盤的研究開発」で締めくくる。
気がつけばバスの時間まで、あと3分になっていた。急いでバス停に戻る。午後16時ちょうど、つくばセンター・バスターミナル到着。充実の1日だった。