『フォントのはなしをしよう』(パイインターナショナル、2021年)は、「ブックデザインとフォント」、「ブランディングとフォント」、「雑誌、ウェブとフォント」というフィールドで活躍されているグラフィックデザイナーのインタビューで構成されている。「ブックデザインとフォント」の中のひとり川名潤さんのインタビューで、「SDときわぎロマンチックW3」が取り上げられている。
好きなフォントは、欣喜堂の今田欣一さんの書体です。たとえば〈SDときわぎロマンチック〉という書体。綺麗な明朝体ですが、ディテールがギスギスしていて好きなんですよ。(中略) 欣喜堂の書体は古い書体に元ネタがあって、活字時代の筆の運びが残っているところが好きなんです。
「SDときわぎロマンチックW3」の元ネタというのは、『右門捕物帖全集第四巻』(佐々木味津三著、鱒書房、1956年)です。「西武古本市」でたまたま見つけて、今では見られない力強い本文書体に魅了され、これを復刻したいと思って購入したのでした。
この活字書体を誰が制作されたのかはわかりません。60年以上前には、多くの書籍で使われ、多くの人々に親しまれてきた書体だと思います。今は継承されていないこの魅力的な書体を蘇らせることにしたのです。
一方で、川名さんは「今までに見たことのない」新奇な書体にも目を向けているようです。
それとはおそらく真逆に、まったく新しい書体の形を模索しながら作られている、フォントワークスの藤田重信さんの書体を使うことも多いです。マンガの装幀では藤田さんの〈筑紫Cオールド明朝〉を使います。絵に負けない書体というか、絵が強いから、藤田さんのグイグイ来る書体もフィットするのかもしれません。
今田さんと藤田さんの書体を混植することもありますが、真逆のベクトルで作られていると思うので、罪の意識にかられます(笑)。
まさに!(笑)
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