その中で、漢字書体「白澤中明朝」「白澤太ゴシック」「白澤太アンチック」が取り上げられています。これはtypeKIDSという勉強会の体験学習のためだけに書体見本を作成したものです。
その後、「もじ部 フォントの目利きになる!」という連載記事が、『もじ部 書体デザイナーに聞くデザインの背景・フォント選びのコツ』(雪朱里+グラフィック社編集部編著、グラフィック社、2015年)として出版され、さらには中国語(繁体字版、簡体字版)でも翻訳出版されました。
当初は欣喜堂として制作するつもりはなかったのですが、ここに至って、何らかのカタチで継続しようかと思うようになりました。なにより「白澤」という書体名に愛着が湧いてきたのです。白澤とは古代中国において、鳳凰、麒麟と同じように、有徳の王の時代に現れるという想像上の神獣です。
漢字書体は漢字表記にしたかったので、書体名を「白澤明朝」「白澤呉竹」「白澤安竹」に変更しました。ほしくずやコレクション「和字Big Dipper 3+3」(2023年)の和字書体「きたりすロマンチックW3」「きたりすゴチックW6」「きたりすアンチックW9」、および「みそらロマンチックW3」「みそらゴチックW6」「みそらアンチックW9」に組み合わせることを前提に、現代的な筆法・結法になるようにしました。
組み合わせる欧字書体としては、フレイヘイド・セリフ(Vrijheid Serif)、フレイヘイド・サン(Vrijheid Sans)、フレイヘイド・スラブ(Vrijheid Slab)として制作しています。フレイヘイドとは自由を意味するオランダ語で、幕末当時の言い方だそうです。
いずれにせよ、発売することのない「見果てぬ夢」の書体ですが、欣喜堂として記録に残しておきたいと思います。