翻刻とは、写本・版本などを、原本どおりに活字に組むなどして新たに出版することです。転じて、書字やレタリング(木版印刷など)から、デジタルタイプとして制作することを翻刻とします。
新刻とは、新たに版木を刻むことです。転じて、下書きから書き起こして制作することを新刻とします。
和字書体の復刻書体は、誇張した解釈をしないことが基本です。しかしながら、現在の日本語組版で求められる条件により、まったく同一にしなければならないということではありません。大きさ、太さ、寄り引きなどの検討が重ねられることは当然のことです。
翻刻(書字・レタリング→活字)では、同じキャラクターでもすべて異なるカタチになります。抽出にあたっては、連綿していない文字のうち、全体の書風が現れているものを注意深く選び出しました。翻刻の場合、この判断が書体そのものを決定づける重要なプロセスとなります。
新刻書体といっても、頭の中にあるイメージだけで制作するということではなく、既成のさまざまな書体を比較検討しながら、目的に適ったカタチを追求しています。
漢字書体の制作において、新規に書き起こす書体を新刻書体、すでに存在するものから再生する書体を復刻書体・翻刻書体といいます。再生するオリジナルが活字の場合を復刻書体、書字・刻字・レタリングの場合を翻刻書体と言うことにします。
復刻書体・翻刻書体は、書道の臨書に近いと思います。臨書とは、古典をお手本とし、手本の書風を取り込むことです。臨書には手本を忠実に書き写す形臨と、手本を書いた人の意思を汲み取りながら行う意臨と、手本を見ないで記憶して書く背臨の三種類があります。
復刻書体・翻刻書体を書道の「臨書」に例えるならば、新刻書体は、「自運」にあたります。自運とは手本を使わず自分の意のままに筆を動かすことです。
欣喜堂の欧字書体は、ほとんど復刻書体です。日本語書体を形成するために制作するのですから、和字書体、漢字書体と同じように復刻書体でなければならないと考えました。
欧字書体十二宮はすべて金属活字の書体からの復刻で、セリフ系が6書体、サンセリフ系が3書体、スラブ系が1書体、その他(イタリック、スクリプト)が2書体です。いずれも、書物や書体見本帳、広告などを原資料としています。追加で制作した欧字書体四天のうち、サンセリフ系1書体、その他(イタリック)1書体も金属活字の書体からの復刻で、書物や広告を原資料としています。