2025年01月19日

[札幌追想①]ポストカード〜漢字書体の系統図を考えた

「日本語書体八策」の漢字書体は、宋朝体「陳起」と「龍爪」、元朝体「志安」、明朝体「金陵」と「武英」、清朝体「蛍雪」、それに呉竹体「銘石」、安竹体「方広」を加えた六系統で構成されている。宋朝体は地域差(浙江・四川)により、明朝体は時代差(明代・清代)により2書体が入っている。
金属活字の時代、例えば民友社活字製造所の初号活字の場合、「初號明朝活字」「初號宋朝活字」「初號明朝活字」「初號清朝活字」「「初號呉竹活字」がある。初號以外のタイプサイズでも同様であり、また各社においてもこのラインナップは揃えられているようである。さすがに元朝体はない。
欣喜堂で明治時代の活字体を復刻した試作では、明朝体「美華」、呉竹体「伯林」、安竹体「倫敦」があり、これに7番目の系統として丸呉竹体「巴里」を加えた。
昭和時代の活字体を復刻した試作では、明朝体「上巳」、呉竹体「端午」、宋朝体「七夕」、清朝体「重陽」がある。
宋朝体・元朝体・明朝体・清朝体、それに呉竹体・安竹体・丸呉竹体、これをもって基本的に、漢字書体の7系統としたい。
手動写植時代の代表的書体では「石井明朝」「石井ゴシック」「石井丸ゴシック」、「アンチック体」(和字書体)、「石井宋朝」がある。また清朝体というのは難しいかもしれないが「石井楷書」もある。
電算写植の代表的な書体として「本蘭明朝」「本蘭ゴシック」「紅蘭楷書」各ファミリーがあり、「本蘭アンチック」「紅蘭宋朝」も企画されていた。
この系統を踏まえて、もっとも新しい書体として「白澤明朝」「白澤呉竹」「白澤安竹」を企画しているのである。
     *
2018年の札幌の旅は、札幌の歴史を辿る旅であった。『札幌歴史散歩』(片岡秀郎編著、ヒルハーフ総合研究所、2012年)に掲載されていた札幌農学校演武場跡(札幌時計台)、北海道庁旧庁舎、北海道大学総合博物館、そして北海道開拓の村を観光した。
札幌市役所の島義勇銅像を背景に、漢字書体系統図のポストカードを作ってみた。開拓判官島義勇(1822–1874)が、他の誰より札幌の歴史を象徴すると思ったからである。

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posted by 今田欣一 at 09:40| Comment(0) | 漫遊★札幌追想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年01月25日

[札幌追想②]リーフレット〜和字書体・漢字書体・欧字書体の混植を考えた

和字書体の名称は和字(ひらがな・カタカナ)で表記することにし、「きたりすロマンチック」「きたりすゴチック」「きたりすアンチック」と名付けた。ゴチック、アンチックと合わせて、明朝体と組み合わせる和字書体をロマンチックとした。
漢字書体の名称はやはり漢字表記でいきたかったので、「白澤明朝」「白澤呉竹」「白澤安竹」とした。わが国において、ゴシック体は呉竹体とされていたので、アンチック体は安竹体と表記することにした。
欧字書体はライラック・セリフ(K.E.Lilac Serif)、ライラック・サン(K.E.Lilac Sans)、ライラック・スラブ(K.E.Lilac Slab)である。
和字書体・漢字書体・欧字書体を組み合わせた日本語[総合]書体の名称は、例えば「きたりすロマンチック白澤明朝K.E.Lilac Serif」というように並ベたいところだが、それではあまりにも長すぎる。そこで「きたりす白澤明朝」「きたりす白澤呉竹」「きたりす白澤安竹」のように簡略化して表記した。それでも他の書体に比べれば長すぎるかもしれない。
だがしかし、別の組み合わせも可能であるから、「みそら白澤明朝」のようになってわかりやすくなるのではないかと考えている。

2019年の札幌の旅は、札幌の公園を辿る旅であった。『札幌の公園ガイド』(北海道新聞社編、北海道新聞社、2014年)に掲載されていた百合が原公園、大通公園、中島公園、そして北海道大学植物園を見学した。
百合が原公園には、日本庭園のほか、札幌市の姉妹都市である中国・瀋陽市の庭園「瀋芳園」、ドイツ・ミュンヘン市の「ムンヒェナーガルデン」、そしてアメリカ・ポートランド市の「ポートランドガーデン」の「世界の庭園エリア」がある。
これらの写真を和字書体・漢字書体・欧字書体のシンボルとして使って、書体見本と組み見本をレイアウトした三つ折りリーフレットを作ってみた。

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posted by 今田欣一 at 08:29| Comment(0) | 漫遊★札幌追想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年02月01日

[札幌追想③]電子書籍〜本文書体の可能性を考えた

活字書体は本文で使うことが一番の目的である。本文といっても紙の本にはとどまらない。そのひとつが電子書籍端末である。
私は2020年8月に電子書籍端末kindle paperwhiteを購入し、娯楽のための読書はもっぱらkindle paperwhiteを使うようになった。
kindleにフォントを追加する方法は、 kindleをPCに接続し、fontsフォルダの中に使いたいフォントを配置するだけである。私は欣喜堂の書体10書体以上を入れており、読んでいる本の内容に合わせて、書体を変えて読んでいる。
従来は、読者側で書体を選択することはできなかった。本の読み方の新しい可能性が広がったように感じる。

2020年は新型コロナウィルス感染症蔓延により札幌に行くことができなかったので、札幌に関する本を読むことにした。ちなみに北海道文学館には2019年に行っている。
『北の人間北の文学』(北海道文学館編、尚文出版、2008年)は北海道に関する文学作品13編、詩・短歌・俳句・川柳、およびアイヌ神謡集をまとめた本である。
この本に掲載されていた有島武郎『小さき者たちへ』の本文をきたりす白澤明朝にして読んでみようと思った。千歳古典名作文庫kindle版『小さき者たちへ』(有島武郎著、千歳出版、2023年)を購入した。
有島武郎(1878–1923)といえば、2018年に行った「北海道開拓の村」には「旧有島家住宅」があり、2019年に通った「大通公園」には「有島武郎文学碑」が建っている。さらには2021年に訪れた「札幌芸術の森」にも「旧有島武郎邸」がある。札幌とゆかりの深い作家なのである。

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posted by 今田欣一 at 08:03| Comment(0) | 漫遊★札幌追想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年02月07日

[札幌追想④]ポスター〜活字体使用の多様化を考えた

活字体は、金属活字から手動写植、電算写植、DTPと変遷していくにつれ、紙に印刷された書籍にとどまらず、電子書籍、WEBメディアへと用途が拡大してきた。さらには、手書きが担ってきたプライベートな文章までも活字体が使われるようになった。
さらには、ポストカード、フライヤー、リーフレットなどの小型印刷物、広告、ポスター、書籍の装幀、商品パッケージなどの立体物、さらには看板、サイン、デジタルサイネージなどの大型の媒体にも広がり、いわゆるレタリングが賄ってきた範疇を取り込んでいった。

2021年の札幌の旅は、札幌のアートにふれあう旅であった。1日目に『札幌アートウォーク』(谷口雅春著、露口啓二写真、北海道新聞社、2009年)に掲載されていた札幌芸術の森、3日目にモエレ沼公園、札幌ドームを回った。
モエレ沼公園のガラスのピラミッドの写真を使って、「KOきたりす白澤呉竹B」で「札幌市平和都市宣言」を組んでみた。非公式の広報ポスターとなった。

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もうひとつのテーマは三大展望台めぐり。2日目に「札幌セレクト」という割引券を利用して、羊ヶ丘展望台、大倉山展望台(ジャンプ競技開催のためリフトには乗れなかった……)、藻岩山展望台(もいわ山ロープウェイ)を訪れた。
羊ヶ丘展望台から札幌ドームを見下ろす写真を使って、「KOきたりす白澤安竹BK」で「札幌市市民憲章」を組んでみた。こちらも非公式の広報ポスターである。

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posted by 今田欣一 at 15:05| Comment(0) | 漫遊★札幌追想 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする