2023年10月09日

[追想5]フォントの品質

SNSに、フォントの品質についての投稿で、品質を判断する条件として、次の4項目が挙げられていました。

収録字数が多い
ファミリー(ウエイト)が揃っている
カーニング情報が優れている
メーカーに信頼性がある

欣喜堂で発売している活字体は、いずれの項目も満たされていません。すなわち品質が悪く、完成度も低いとみなされてしまうようです。

収録字数の課題
OpenTypeフォントの製品においては、アドビシステムズ社が日本語DTP用に開発したAdobe-Japan1が事実上の基準となっています。一九九〇年代に定義された1-0から最新の1-7まで、順次字数が追加されています。
欣喜堂の「龍爪」「金陵」「蛍雪」「銘石」は、Adobe-Japan1-1にほぼ(不足あり)準拠しています。90JIS(JIS第一水準・第二水準漢字)に対応しており、8359グリフです。「陳起」「志安」「武英」「方広」は、Adobe-Japan1-3(Std)にほぼ(不足あり)準拠しています。Adobe-Japan1-1にIBM選定文字、記号などが追加された9354グリフです。
本文用フォントとしては、Adobe-Japan1-7(Pr6/Pr6N)に準拠することが必要とされます。JIS2004(JIS第三・第四水準漢字)と補助漢字(JIS X 0212:1990)をカバーしています。23060グリフあります。
Adobe-Japan1-7(Pr6/Pr6N)に対応するにはかなり敷居が高いので、まずはAdobe-Japan1-3(Std/ Std N)に完全対応できるようにしたいと思います。

ファミリー
ファミリー(ウエイト)もフォントの完成度の条件になってきています。欣喜堂では次のようにウエイト(太さ)の段階を設定しています。「日本語書体八策」「日本語書体三傑」でファミリーの試作をしています。

W1 Tn(シン=Thin)
W2 L(ライト=Light)
W3 M(メディウム=Medium)
W4 Tk(シック=Thick)
W5 DB(デミボールド=Demi Bold)
W6 B(ボールド=Bold)
W7 EB(エクストラボールド=Extra Bold)
W8 UB(ウルトラボールド=Ultra Bold)
W9 Bk(ブラック=Black)
W10 H(ヘビー=heavy)

能力不足で、これをすべて制作することができません。
このなかでは金陵M/Bが発売済です。さらに銘石Bのファミリーとして銘石Mを制作中です。ファミリーといっても銘石Bは見出し用ですが、銘石Mは本文で使えるように筆法・結法を大幅に見直しながら進めています。

カーニング
カーニングについても対応できていません。「日本語書体八策」の武英については欧字書体の一部の組み合わせで実施していますが、和字書体は実施していません。少しずつ対応していきたいと思っています。

メーカーの信頼性
零細タイプ・ファウンドリーでは知名度も高くなく、技術的にも信頼性に欠けていると思われるのが現実です。ダウンロードサイトと連携をとりつつ、バージョンアップなど、こまめに対応していきたいと思います。
posted by 今田欣一 at 20:44| Comment(0) | 活字書体打ち明け話・5 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする